橘玲さんの本はいつもためらいなく痛いところを突いてくる。
『人生は攻略できる』は大学生や若いビジネスマン向けに書かれています。だからいま37歳の僕が読むにはちょっと遅く「もっと早く知っていれば……」と思う部分もたくさんありました。
昨今世間を賑わせている、老後2000万円不足問題についても、やみくもに危機感を覚えて投資をはじめる前に一読する価値がある本だと思います。
3つの資本で幸せの土台をつくる
人生には3つの幸福の資本があると本書は説きます。
- お金(金融資本)
- 仕事(人的資本)
- 愛情・友情(社会資本)
どれかひとつでも持っていれば、不幸ではないと本書では定義されています。
- 仕事は別に充実してないし、お金もないけど、仲間がいるから楽しく生きてる地元のアイツ。
- 仕事はバリバリこなすけど、消費も多いから貯蓄はないし、親しい友人もいない都会のビジネスマン。
- 働いてないけど、親の資産があり、友だちがいない独身。
どれも幸福絶頂ではないけれど、不幸というわけじゃない。そういうイメージです。
3つの資本すべてを揃えるのはかんたんではありませんが、不可能でもありません。
3つ揃えるためにどうするかという視点で読むといま自分にできることが見えてくると思います。
お金:「長く、いっしょに働く」と複利を意識する
お金については、収入を上げて、支出を減らして、残った分を運用していく。もうこれだけです。
「(収入-支出)+(資産×運用利回り)」
この式で表せます。
「長く働く」「いっしょに働く」
収入を増やすためには「長く働く」「いっしょに働く」が提唱されています。
60歳で定年を迎えるから老後にお金が足りなくなるわけで、70歳でも80歳でも働けばいい。継続して働けるようなスキルがあれば理想ですが、シニア雇用でもいいでしょう。
また夫婦共働きにすれば、さらに楽にお金が貯まります。
実はうちも妻はほぼ専業主婦状態で僕の仕事を軽く手伝ってもらっている程度なので、このあたりの話は耳が痛いんですが、共働きの効果を数字で見るとインパクトあります。
仮に夫が80歳までの20年間を年収300万円で働けば、6000万円の収入が得られます。
さらに妻が子育てが一段落した40歳から20年間、パートで年収200万円で働けば4000万円。夫といっしょに80歳まで働くなら8000万円の収入が生まれます。
夫1人が定年まで働いて退職して年金生活するパターンをベースにすると、夫婦で80歳まで働けば追加で1億4000万円の収入が得られる計算です。
「いや早く稼ぎきってセミリタイアしたいんだよ」って声が聞こえてきそうですが、老後に不安を覚えるよりはこういう道も知っておきましょう。
あくまで理想です。お金が有り余ってたら引退したらいいんです。
僕も妻に外で働いてもらうハードルは越えられそうにありません……。
余談ですが、外に働きに出ている方が健康面でもプラス影響が大きいんじゃないかなと思っています。家にずっといたら身体も衰えて、すぐにボケてしまいそうです。
複利の力
複利は凄いよって話です。
最初はたいしたことなくても長期で見るとすごい膨らみ方をしていきます。
元手を増やすために、(収入-支出)で余った部分を投資に回していく意識を持ちましょう。
また投資ではプラスサムゲームに参加することを忘れないでください。単純に言うと長期投資で会社の配当で全員が儲かるような方向性です。
僕はインデックス投資信託に分散投資するつもりですが、優良企業を何社か選んで個別株を長期保有してもいいと思います。
ちなみに短期トレードは誰かが勝った分、誰かが負けるゼロサムゲームです。言い換えればギャンブルと同じです。勝つ人・強い人もいますが、その対極で負ける人・弱い人もいます。
儲かっている人の話は生き残りバイアスとして聞いています。僕はギャンブル弱い自覚があるので、こういう世界でお金を増やすのは向いてません。
ギャンブルを楽しむのはいいんですが、投資のつもりでギャンブルにお金を突っ込まないように注意しましょう。
(胴元の取り分が少ない分、短期トレードなどは稼ぎやすいギャンブルではあります。宝くじや競馬と比較すれば。パチプロやトレーダーが職業として成り立つのは割が良いからです)
仕事:クリエイター・スペシャリスト・バックオフィスの3つの働き方
仕事を選ぶ段階で知っておきたかったのがこのあたりの話。息子や娘にも中学生くらいになったら教えてあげたい部分です。
クリエイターはそのまま何かを作り出す仕事です。会社員ではないのが特徴。これで成功するのはなかなかむずかしい。突出した才能が必要だと思います。
スペシャリストの例で分かりやすいのが医者です。開業医もいるし、大きな病院の勤務医もいます。なにか「スペシャル(専門)」を持っています。
バックオフィスはいわゆる事務系の仕事です。マックジョブとも呼ばれる、AIに代替されやすいような仕事です。これを選ぶ旨みはあまりありません。
現実的にはスペシャリストがいちばん選択しやすいでしょう。
マーケティングでも営業でも広報でも、その仕事を専門的に極めていく。これからはそういうつもりで働くのが、安定して稼ぐために必要です。
アフィリエイターの場合はクリエイターに近く、専門性を育てるならWebマーケティングやライティング、Webデザインなどが親和性が高いと思います。サイトが全飛びして就職するなら役立ちそうです。もちろんアフィリエイト領域で仕事があれば理想です。
日本やばい
日本人の働き方、日本企業の仕組みには痛切な批判が述べられています。
日本型の終身雇用とジョブローテーションが海外企業と戦う上でどれだけまずいのかは以下の引用部分のたとえが秀逸です。
日本の会社は、ビジネス環境がどれほど変化しても、たまたま新卒で採用した社員だけでなんとかやりくりしようとする。これはフォワードがいなくなったら「陸上部のあいつ、ちょっと足が速いからどう?」とか、「ゴールキーパー、身体がデカいからあいつにやらせればいいんじゃないの」とかいっているのと同じだ。そんな素人チームが、メッシやクリスティアーノ・ロナウドがいる世界的なクラブと互角の勝負ができると思っている。
橘玲. 人生は攻略できる. 株式会社ポプラ社. Kindle 版.
これを踏まえて3つの働き方のどれを選ぶかを考えておくといいでしょう。
愛情・友情:弱いつながりと強いつながり
友だちや恋人、家族がいない人はなかなか自分のことを幸福だとは思えないでしょう。お金や仕事があってもどこか虚しいような気がします。
僕も二十代の一時期、収入があってもまったく幸福感がない頃がありました。
短期間ですぐにどうこうできる分野ではないので、社会的なつながりは少しずつ育むしかありません。
昔の友人や趣味や地域のコミュニティに関わりを持つのがスタートしやすいでしょう。
また家族や恋人、仲の良い友人などの強いつながりとは違う、弱いつながりについても本書では述べられています。
弱いつながりはメールやSNSのやり取りが中心で一緒に仕事をするような知り合いを指しています。
ここを読んで僕がいちばんに浮かべたのがTwitterで知り合った人たちのことです。
直接会ったことのある人もたくさんいますが、顔も知らない人でも何か仲間のような意識があります。
行く先々で地元のアフィリエイターと交流している人も多いですよね。これは確かな幸福の土台だろうと思います。
少数の友人や家族と強いつながりを持ちつつ、弱いつながりも意識していくようにしたいところです。
他にも引用したい部分がたくさんある面白い本です。アメリカの大学のセックス相関図で見る人間関係とか伽藍とバザールの話とか。
橘玲さんの他の書籍への入門編のような位置づけもあり、より詳しく知りたい人は他の書籍への案内も巻末にあります。
なんとなく流れに乗って生きている人は一回立ち止まってこの本を読んでみると視界がクリアになると思います。
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