今日も街には老若男女が溢れている。
誰もが誰かを求めているようにせわしなく前だけ見て歩みを刻む。
立ち止まってスマホを操るあの娘も例外じゃない。スマホの画面の向こう側の誰かに近づいている。
生きている。
命の輝きがスマホの背面から解き放たれ、虚空をまぶしく照らす。
彼女は言うだろう。「いつのまにかライトがついてただけだよ」
そんなはずない。
そうだろう? 彼女の目の奥から放たれたきらめきはきみの足を止める。
きみの選択肢はそれほど多くない。
(スマホストックより)
何も言わずに通り過ぎる
事なかれ主義のきみのことだ。家を出る前に愛猫にキスを忘れてきたのかもしれない。調子の出ない日もあるだろう。
遠ざかる背中を責める人はいない。追う人も。
それで満足か?
「ライトつけっぱなしですよ」
ため息が出る。もちろんうっとりしてるわけじゃない。勘違いするな。
電気は無尽蔵じゃない。地球にやさしく。くそくらえ。
ライトを消した彼女はまばたき一回できみのことなど忘れてしまう。
こころに火をともせ
相手がほおづえをついたら、すぐに真似をしろ。赤子のような日々。慣れない営業の現場で得た知識を思い出せ。そうミラーリングだ。
懐中電灯のアイコンを押し続けて、きみのこころ(スマホ)に火を点けろ。
「あのうライトついてますよ?」「あなたもね」
どっちがどっちかはたいした問題じゃない。
いまほほえんだ彼女の顔を毎日愛おしむ権利が、きみにはもうある。
光るきみ
アメリカの天才が作った機械に取り付けられたLEDライトは太陽の下で力を失っている。
それを取り戻すためにきみは生まれてきた。
さあスピードをあげろ。
きみのTシャツに浮かぶ光が一点に収束したとき、宇宙は変わる。
彼女の世界できみこそが光。最後の希望。
白いTシャツを着てる? ほんとうにきみは狭い道が好きだな。
リメンバー・ザ・メドゥーサ
磨き上げた盾を構えるきみに彼女は見えない。
鏡の向こうで彼女はただ自分を見つけ、光を自分に戻して増幅させていくだろう。
そのストーリーにきみはいない。脚本家を殴りつけろ。
俯瞰
戦いの中で成長するのはきみだけじゃない。生き馬の目を抜く現代社会で彼女もまた眠った才能を開花させる日を待っている。
きみの視線がきっかけだ。
幽体離脱したように、舞い上がるとんびのように、彼女は空に飛び出す。
見下ろしたひとの群れが次にどんな形を作るのか、ただわかる。ことばはいらない。
視線の集まる場所に気づいたとき、すでに長押しははじまっている。もうだれも彼女を止められない。
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